東京高等裁判所 昭和61年(行コ)97号 判決 1988年12月06日
千葉県八日市場市イの一三八番地の一〇
控訴人
株式会社千葉農林
右代表者取締役
岡野全孝
右訴訟代理人弁護士
大石徳男
千葉県銚子市二丁目一番一号
被控訴人
銚子税務署長
水木善造
右指定代理人
山口晴夫
同
白石信明
同
沖上照
同
村田太一郎
右当事者間の法人税更正処分取消等請求控訴事件につき、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実
一 控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和五六年二月二六日付け法人税額等の更正通知書及び加算税の賦課決定通知書をもつて控訴人に通知した控訴人の昭和五二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の所得金額を二億九六六四万八三三九円、課税土地譲渡利益金額を三億〇一六五万九〇〇〇円、法人税金額を一億七八一五万〇九〇〇円及び翌期へ繰り越す欠損金額を零円とする更正処分並びに過少申告加算税の額を八九〇万七五〇〇円とする賦課処分をいずれも取り消す。訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
二 当事者双方の主張及び証拠関係については、左に付加、訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決八枚目裏三行目「被告」を「控訴人」と改める。
2 同九枚目表六行目「見るべきである。」の次に、行をかえて次のとおり加える。
「ところで、法人税基本通達等によると、不動産等の売買の譲渡収益の計上時期は、原則として物件『引渡の日』が属する事業年度とされるべきであるが、法人が売買等の譲渡契約の効力発生の日の属する事業年度にその収益を計上する場合には、これも認めることとされている。右の原則にいう『引渡の日』は、特別の事情のない限り、文字どおりに解釈すべきものと思料される。本件売買契約においては、不動産売買契約書(乙第2号証)の第六条に『甲(控訴人)は、本物件に対し、賃借権、占有権、居住権等を有している、すべての利害関係人(但し、第一一条、第一二条及び第一三条によつて、所定の権利を有する京成電鉄株式会社の場合を除く。)を昭和五三年四月三〇日限り、完全に立ち退かせ、瑕疵のない物件として、乙(上野ビスタビルデング株式会社)に引き渡すものとする。乙は、この引渡しと引換えに、甲に対し、残代金金五億円也を支払うものとする。』との条項があり、また、昭和五二年九月二九日付の控訴人から株式会社聚楽宛の通知書(乙第一六号証の一)には、賃貸人の地位は、登記名義のいかんにかかわらず、依然として控訴人である旨の内容が含まれている。更に、控訴人は、昭和五七年八月ころまで本件不動産を具体的に管理し、東京電力株式会社と一括した電力供給契約を締結してこれに基づき各テナントに電力を供給し、テナント三社から、賃貸料、電力料金の支払を受け、建物の全般的な設備保守管理業務は第一建築サービス株式会社に委任していた。」
3 同九枚目表七行目「本件不動産」から八行目「もので、」までを「昭和五七年八月を本件不動産の引渡の日と見るべきであり、仮にそうでないとしても昭和五三年四月三〇日を本件不動産の引渡の日と見るべきであつて、いずれにせよ、本件不動産の売買は」と改める。
4 同九枚目裏七行目「立退補償料」から一〇行目「予想していた。」までを「控訴人からテナント三社に支払われるべきであつた立退補償料相当額の合計は一〇億円を下らない。仮に、控訴人が当初立退補償料は五億円程度ですませようと見込んでいたとしても、それが錯誤に基づくもので現実にはその何倍もの立退補償料を出費したときは現実の出費の額によるべきである。」と改める。
理由
一 当審も、控訴人の本訴請求は、これを失当として棄却すべきものとするが、その理由については、左に付加、訂正するほか、原判決がその理由において説示するところと同一であるから、これを引用する。
1 原判決一二枚目裏六、七行目「テナント三社」を「テナントである株式会社聚楽(以下「聚楽」という。)、株式会社高正(以下「高正」という。)、有限会社京成清浜靴店(以下、右三社を「テナント三社」という。)」と改める。
2 同一三枚目裏四行目「そして、」の次に「前掲乙第二号証」を加え、九行目「第四、」を「第三ないし」と改め、一〇行目「総合すれば、」の次に「昭和五二年七月二五日に締結された本件売買契約においては、控訴人と京成電鉄との間の昭和五二年七月二一日付の不動産売買契約書、賃貸借契約書及び同日付のネオンサイン・看板等の取扱いに関する覚書により京成電鉄が取得した権利義務に関する地位を上野ビスタが控訴人から承継する旨の約定がなされていること(乙第二号証の第一一条、第一二条)、」を、末行「一社」の次に「である聚楽」を各加える。
3 同1四枚目裏三行目「証拠はない。」の次に、「また、前記不動産売買契約書(乙第二号証)によれば、その第六条には本件不動産の引渡等に関し控訴人主張の如き内容の条項があることが認められるが、右条項の存在も右認定の妨げとなるものではない。」を加える。
4 同一六枚目裏五行目「株式会社」を削除する。
5 同一七枚目表1〇行目「いうべきである。」の次に「立退補償料として一〇億円を下らない出費を必要としたことを認めるに足りる証拠はなく、」を加える。
6 同一八枚目裏五行目「該当する。」の次に、行をかえて次のとおり加える。
「本件売買契約において本件不動産の引渡期限が昭和五三年四月三〇日と定められたことが右判断を左右するものでないことは前記二1で説示したとおりである。」
二 以上の次第で、これと同旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中村修三 裁判官 篠田省二 裁判官 席野杜滋子)